郵政民営化に賛成だから自民党に投票するという人へ

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そういう人、多いと思うんですよ。
何しろ、あれだけ「郵政民営化に賛成か反対か」って連呼してるわけですから。
世論も盛り上がってるし、ここはひとつ投票して有権者らしく賛否をはっきりさせようじゃないか、とか考えてる人もいることでしょう。
でも、その前に少しだけ考えてもらいたいことがあるんです。
別に自民党に投票するなというわけではないんですけど、どうしても言わずにいられなかったんで、書かせてもらいます。


そもそも「郵政民営化に賛成/反対」という二択を迫ること自体が心理的なトラップなんです。
(0)慢性的な財政赤字を解消しなければならない
(1)そのために抜本的な行財政改革を行うべきか
(2)行財政改革の一環として、郵政事業の見直しをするべきか
(3)郵政事業を見直した上で、これを民営化するべきか
本来ならここまで考えた上で郵政民営化という「手段」が議論されるべきなんですが、自民党は(3)の選択を迫った上で、「改革を止めるな」というキャッチフレーズを掲げることによって(3)と(1)を短絡化しようとしています。つまり、(2)の選択を無視する一方で、「郵政民営化に反対」=「行財政改革に反対」というイメージを植えつけようとしているわけです。
(0)が根本的な目的で、そのために(1)が必要だということは誰しも薄々感じてはいるのです。(3)はあくまでその手段なのに、(1)と(3)を短絡化させたらどうなるか。いわゆる「手段と目的が入れ替わる」というやつで、(3)がどうしても必要であるような雰囲気が生まれてくるわけです。
(2)の議論を経た上で発生すべき「民営化」というひとつの手段を、「改革」というポジティブなイメージと強引に直接イコールで結ぶことによって「民営化」自体にポジティブなイメージを持たせる。その上で賛成か反対かというシンプルな(=深く考えることを妨げる)選択を迫ることで、民営化以外に検討すべき手段はないかのように思わせる。よく計算されたトラップです。
要するに「郵政民営化」という手段を実行すること自体が目的で、それを果たすためにトラップが仕掛けられたわけなんですが……まあ、その辺はいいとしましょう。しちめんどくさい話なんで、どう思うかはお任せします。
ところで、郵政民営化に賛成だからと自民党に投票して、まあ仮に自民党が衆議院の過半数を占めたとしましょう。そうしたら民営化法案が成立する(可能性が強まる)わけですが、その後についてはどう思っていますか?
解散がなければ4年間、衆議院は自民党のものです。衆議院優位の原則がある以上、自民党が思ったことは大抵通ります。たとえそれが消費税率アップであろうが、厚生年金の保険料再値上げであろうが、まあ思うがままでしょう。憲法を変えまくるかもしれないし、イラクの自衛隊はさらに派遣が延長されるかもしれない。もしかしたら、あなたが絶対に嫌だと思うこともあるかもしれません。
でも、どんなに不満を言っても無駄です。
「自民党を選んだのはあんたら国民だ」
そう言われるだけですから。
何が言いたいかというと、郵政民営化というひとつの手段の賛否だけで政権を選択するのは非常に危険だ、ということです。衆議院選挙はあくまで国政選挙であって、ひとつの法案に賛成か反対かを決めるための国民投票ではありません。どこかの党なり候補なりを支持して投票するということは、今後4年間その党(候補)に政治を任せてしまうということになるのです。
「わたしは小泉さんが好きだから……」
それもいいでしょう。でも、その小泉首相は来年9月の総裁任期切れと共に退陣することを明言しています(続投論は根強いようですが)。衆院選で自民党が勝って、来年まで小泉政権が続いたとしても、その後を継ぐのは誰でしょう。おそらく自民党次期総裁が首相になるのでしょうけど、その人のことまで、好きになれますか? その人は、あなたが好きな小泉流政治を引き続きやってくれるでしょうか?
自民党(とその公認候補)に投票するということは、そういうことです。
ここまで読んで下さって、もし多少なりと不安を感じたならば、やることが2つあります。
1つめは、自民党が今回の衆院選で掲げているマニフェストを読むことです。その内容に納得できるか、今後4年間政治を任せてもいいのかどうか、考えてみて下さい。もちろん、内容を検討するためには他の党のマニフェストを読んで比較することも必要でしょう。マニフェストの比較表なんて便利なものもありますから、ご参考までに。
2つめは、あなたの選挙区の自民党公認候補がどんな政策を掲げているのかをチェックすることです。もしかしたらその人は、小泉首相の言うことなら何でも聞くぼんくらイエスマンかもしれませんし、小泉人気にあやかって議員になってウハウハなことを夢見ているだけかもしれません。信頼できる人かどうか、よく吟味しましょう。もちろん、他の候補と政策を比較することも大事です。
最後にもう一度念押しをしておきますが、私は自民党に投票するなと言いたいわけではありません。投票するなら、その意味と責任はしっかり理解しておいてほしいと思うだけです。
ちなみに。
私は小泉首相が大っ嫌いです。
人心を惑わす詭弁家は世のためになりません。

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