「彼方からの手紙 vol.9」を鑑賞する

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山田露結さんと宮本佳世乃さんが発行しているネットプリント「彼方からの手紙」、今回はゲストに喪字男さんを迎えての第9号とのことで、遅まきながら落手しました。それぞれの俳句8句+ごく短いエッセイ。こういう小作品を気軽に楽しめるのがネットプリントのいいところだと思います。もっとも、読む方は気楽ですが、デザインやレイアウト等々がしっかりしているだけに、作る側のご苦労が偲ばれます。

では、少しですが感想などを。

■山田露結さん

紅葉散る窓ありホルムアルデヒド

こういう無関係性は好みです。ホルムアルデヒドという言葉、ちょっとマイナーかなとも思ったんですが、シックハウス関係でよく使われているんですね。私は元・化学系なので、こんな風に薬品名が出ると惹かれてしまいます(笑)。

死ぬ夢の中にも冬菜抱く場面

ただの夢ではなく、死ぬ夢。そこに冬菜を抱くという展開。詩的ですね。私もこういう句を詠めるようになりたいです。

■宮本佳世乃さん

冬眠へ泡の流れてゆきにけり

冬眠というのは状態を示す言葉なのに、それが泡の流れる目的地として設定されている。こういう文法的な飛躍は好きです。それと、冬眠と泡というまったく関係ない単語が「へ」ひとつで結びついている意外性。この辺は宮本さんらしいと思います。句全体のあっさりとした無意味性もいいですね。

寒菊の陽あたり薬局へいかうよ

これも唐突な展開で好きです。普段はあまりお世話にならない薬局という場所へ積極的に誘う呼びかけが面白いですね。一方で季語への配慮も出来ていて、この辺も宮本さんらしいな、と。

■喪字男さん

ともだちにならう蜜柑を剥いてあげる

蜜柑を剥くことでコミュニケーションを求める不器用さと優しさに親しみを感じます。いいですね。

クリスマス黒き光のなかりけり

黒い光なんてそもそも存在しないのが当たり前なのですが、クリスマスと結びついて一気に詠み込まれると何となくあってもよさそうに思えてしまうところが不思議な面白さだと思います。イメージをいっぺんに読み手に伝えることができる俳句という形式だから言えることなのかもしれません。

以上、ざっくりと感想でした。

「彼方からの手紙」はいつもクオリティが高いので、読むのが楽しいです。これだけの質を保つのはいつも大変だろうとは思うのですが、第10号にも期待しております。それでわでわ。

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