別にゲームに限った事ではないのだが、自分が今熱中している物のイメージが、日常生活にダブってしまう事はないか?
私は1年くらい前から、モニターの電源を落とす時に、痛みにも似た感覚が胸に走るの
で困っている。――「SYSTEM DOWN」と。
……私が初めてレイフォースを見た、これを書いている1996年3月現在でなお存在し続けている、ハイテク代々木のレイフォースの台(この本が出る頃には、レイストームに取って代られているであろうが……)には、ヘッドホンが付いている。
弟に「ほい」と渡されたそれを、「はい」と受け取って頭に装着した瞬間から、多分暗示は始まっていた。
“PENETRATION!”
その時聞き取れなかったこのVOICEは、一種のサブリミナルメッセージとして、私の中に文字通り「侵入」し、少しずつ、確実に、そして今となっては完璧なまでに、私を支配してしまった。
もう身も心もすっかり、銀色のハードワイヤーに絡め取られてしまって――「自分で自分を制御する事ができない」、そう簡単には解放してもらえそうにない。
その囁きを聞いてしまった時には、本当にもう手遅れなのだ。
(参考:レイヤーセクションのケースのコピー「~一度捕えたら君を逃さない…~」)
↑でも4秒で解除(笑)。
――そんな訳で、「言葉と音楽から拡張されるイメージの概論」である。
レイフォースの各面には、アニメよろしくサブタイトルが付いているのだが、いくら次の面の攻撃に備えなきゃならないとはいえ、それすら認識していないようだと、レイフォーサーとしてはちょっと悲しいものがあるぞ――う。その言葉は世界観を理解する上での重要な鍵なのだ。面の終盤で意味が示される、というのが大体の傾向と対策である。
AREA 1 / RED POWER TO PIERCE THROUGH〈直訳:貫き通す為の赤い力〉:それは宇宙の闇を貫く、赤いX-LAYであろうか、それともデュアルランス爆発時の、収縮してゆく残光だろうか?
AREA 2 / THE GRAVITY OF BLUE SIDE〈青い側の重力〉:本星の重力。言わずもがな。
AREA 3 / THE PHANTASM OF SILVER〈銀色の幻影〉:パイロットの肉体もさることながら、ギガなのだろうか、やはり……。
AREA 4 / THE FISSURE OF CONSCIOUSNESS〈意識の裂け目〉:地割れがFISSUREだというのは、最初見た時から感じていた事。その彼方に見える物は、何なのか――!?
AREA 5 / TOWARD THE DARKNESS〈闇に向かって〉:地下都市も充分闇だが、オーディンの待ち受けるハッチはさらに闇だ。
AREA 6 / THE END OF DEEP LAYER〈深層の果て〉:ここだけは他の面と少し毛色が違っている。深層の意識も渓谷も、いつ終わるとも知れない苦しみの中――。
AREA 7 / RELEASING INFINITELY〈無限に解放されてゆく〉:終幕が、総ての解放でなくて何だろう!? 本星の爆発、そしてパイロットの肉体も、いずれは……。(この辺ビデオの結末はイマイチ気に食わん)
といった所か。――もっともこの言葉が付いていても、ゲーム単体ではただのシューティングだ(十二分に面白い事に変わりはないだろうが)。しかし、BGMとそれに付随するストーリーは、パイロットの心理を提示し、レイフォースをゲームを超えた「物語」へと進化させた。CDというメディアの力を借りなければ、総てを表現し切れなかったのは卑怯だ、という異論を唱える者もいるが←弟である。
無機的な音色の底に息づく情緒、サブタイトルとリンクした絶妙なボイス。
音楽が何を語っているのか、私が決め付けてしまうのは適切ではない。それはCDのライナーを読んで(万一持っていない奴がいたら、今すぐCD屋に駆け込め!! 置いてなかったら注文しろ、「PCCB-00153」で通じる)から、ゲームをプレイしてみて、自分の「ハートで確かめ」るものだからだ。X-LAYとなって、「彼女」の戦いの中に身を置き、同時に曲を聴く事によって、心に刻まれる想いがあるはずだ。
それがあまりに魅力的で、自分が引きずり込まれたまま出られなくなってしまうのではないか――という恐れを抱く必要はない。余程混んでいるゲーセンでない限り、ゲームが終わった時には、ランキングの画面と共に、「KP-4」の軽やかな旋律が、君をきちんと現実世界に送り返してくれるから。(ランキングに残れないような初心者さんには、そこまで感情移入する事はできないだろうから心配なし(失礼))エンディングまで実力あるいはお金がもたなかった場合には、「REASON FOR IT」というオマケが付くが……。
先の文章で言及した、コミックゲーメストの投稿の最後に、「すべての役目を終えて放浪の旅へと出発した彼女の魂が、安らかに眠れますように。」と書かれたパイルバンカーさんは、「que en paz descanse」という、スペイン語の意味を知っていたのだろうか。また、ゲーメストNo.121 P.84に掲載されている、そのパイルバンカーさんの6面ボスに関する文章に、「そしてメビウスの虚空へ」というタイトルを付けた(であろう)田渕健康氏は、6面の曲のタイトルを意識していたのだろうか。――極度に統一・完成された世界観は、このような奇跡をも続出させ得るのだ。
……では、以上の点を踏まえた上で、言葉と音楽にゲーム性が加わった時に、提示される物は、何なのか?
――それは、あなたが見て、プレイしてきた、「レイフォース」そのものである。
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