没投稿から復活掲載。シチュエーションとしては、「多摩川の上から亡き横須賀線 113 系を悼む」ですが、実際のところは亡母へのレクイエムでした。難解とも突飛ともいわれる、掲載時に切られてしまった 2 行:「いつか再び逢えるのならば/今生きている意味がない……!」、これこそが真髄だったのです。 (2001/7)
続き:「光へ。-春の彼岸に-


秋も彼岸となれば
陽が落ちるのも大分早くなって
黄金色の夕焼けの中を
家路に向かう私を乗せて
電車は今 河を越えて走る
 
……何処か遠くに
全ての生けとし生ける者が
最後に渡る “河” がある、と
人はいう
向こう岸へと旅立ってしまった
愛しき車両(もの)たちの
在りし日の姿が
熱い胸をよぎる
もう一度
見たい 乗りたい 話したい
私も あの河を越えて
貴方の許へ
逢いに行くことができたら
 
違う――そうじゃない
貴方は多分
もう何処にもいない
いつか再び逢えるのならば
今生きている意味がない……!
共にいられた幸福(しあわせ)時間(とき)
終わりがあるからこそ貴かったのだと
死に別れることの
大きな悲しみを通して
生きて在ることの
この上もないかけがえのなさを
最期に私に遺してくれた
他の誰よりも大切だった貴方
 
でも 貴方への餞として私は誓う
貴方を亡くしてぽっかりとあいた
冷たい秋風が吹き抜けていく胸の隙間は
新たに生まれいずる車両たちを
いつか迎え入れるためにあるのだから
貴方がどんなに素晴らしい存在だったのかを
後に続く者たちへと語り継いでゆくと
私の生命(いのち)ある限り
力の限り
 
涙に濡れた瞳を
朱い夕陽に強く光らせている私を乗せて
電車は今日も鉄橋の上を
河を越えて走り続ける

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