1994年7月28日

 スコアネームは「MNT」、ずっと前から決めていた。
 名字の「SNG」は弟が使っているし、名前の「TMK」では今一つ面白味に欠けるような気がする。そこで、パソコン通信のハンドルネーム「MINT」から1文字抜いて、「MNT」。この3文字は、本名のローマ字表記に含まれるものでもあるのだ。……といっても、1面はいつの間にか抜けていたけど、2面をクリアできない私じゃあ、ネーム入れなんて当分先だよねー、あっはっはー…… などと、一人で苦笑していた当日に、それは起きたのだった。
 茗荷谷のJ&B、そろそろパターンもわかってきて、ゲーム開始直後のイチニッパとニゴロが綺麗に決まった。でも1コイン目はポセイドンで終わる。即刻コンティニューというのは、1コインだとあまりにもあっけなく終わってしまうので、茗荷谷では2コインをディフォルトにしたのだ。少しでも先を見るために、それにその分だけインカム上がって、台が長持ちしてくれるだろうし……それでもやっぱり先は厳しくて3面序盤で終わる。コンティニューのカウント早く落として帰ろっと――と、突然現れた、見た事のないメッセージ、CD でしか聴いた事のない曲。
〈 ENTER YOUR INITIALS 〉
 うそ。
 ええええー、2面もクリアできない下手クソでも、ネーム入れってさせてもらえるものだったの!? 実はやり方知らない……のよね。レバーで選択するの? あ、動いてる。Aボタンで決定、いいみたい。M、N……T! 最後のAボタンを押した瞬間、創作ではなく誇張でもなく、指先から腕にかけて、電流のようなものが走った。初めて筐体が、私一人のためだけに応えてくれたのだ。
 〈 BRAVEST PLAYERS 〉の末席に、ちょこんと表示されている3文字を、思わずしげしげと観賞してしまった。……同じ茗荷谷の街で、初めてアーケードゲームをやった、ガイアポリスに1コイン入れてみた日から、奇しくもちょうど一年目。ゲーマーとしてのデビューバースディだった。

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