1994年12月23日

 何という事だろう―――。
 昨日、母が倒れた。最近あまり具合が良くなかったのだが、ついに身動きができなくなったのだ。年が明けたら即入院だという。
 母の具合が心配なのはもちろんだし、入院後の家事の負担も家族と話し合わなきゃいけないけれど、今の私にとって一番ショックなのは、もうゲーセンには通えなくなる、という事だ。会社から定時で帰って、家族の夕食を作らなくてはならない。たとえ20分といえども、「遊戯」などのために、自分を含めて家族を待たせる訳にはいかないのだ。
 「左利きのレイフォーサー」の挑戦は……ゲーセンにレイフォースがある限り続くはずだったのに……こんな形で、終わりになっちゃうの……? 残り時間はまだあったのに!
 例えば私が女じゃなかったら、家事を強制されるジェンダーでなかったら、結果は違ったんじゃないか……!? レイフォースを理解する上での最大の強味が、レイフォースをプレイし続ける上での、最悪の弱点になるなんて―――!!
 今日も家事を手伝うために、ゲーセンに寄らずに帰らなきゃならない。駅向こうから私を呼び寄せる、GRAVITYを振り切って、電車に駆け込む。それでもなお、茗荷谷から遠ざかる、電車の車体を透過してまで、レイフォースが私を呼ぶ声が聞こえる……!
 この半年間、丸ノ内線を利用していながら、レイフォースをやらずに帰った日は片手で足りる。私にとって帰りの丸ノ内線は、レイフォースへの思いを乗せて走っていたようなものだ。第17編成、やったよ、G.P.M.S.-2を越えられたよ。第22編成、今日はちょっと悔しかったな。02系、500形、今日はね、今日はね…… そう車両に話しかける思いが、今は、ない。寂しいよ――やめて「02524」、6月17日と同じVVVFの音は、悲しくなるから聞きたくないっ……!!
 今年の夏は終わらない――夏はまだ終わっていなくても、12月が終われば「今年」は終わってしまう事に、何故、今の今まで気が付かなかったんだろう……!!

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