1994年12月20日

 自分がスランプから抜けるのと入れ代わりに、茗荷谷の台の調子が悪くなった。レバーの反応がどうも変だ。そして今日、決定的な事態になった。下方向の反応がおぞましく悪い! だましだましプレイしていったが……自機がこういう意味で思い通りに動かせないというのは――これほど恐ろしいレイフォースは、今だかつてやった事がない。慎重の上に慎重を重ねたせいか、3面までは奇跡的にノーミスで抜ける事ができたが、4面の攻撃にはもう歯が立たず、いくら何でも、そのままコンティニューする気にはなれなかった。
 奥のカウンターに座っていた、気さくそうな店のおじちゃんに事情を訴えた。
「済みませ――ん、今やったレイフォースの台、下方向のレバーの利きが、ものすごく悪いんですけど」
 おじちゃんは面倒だとかいう素振りを全く見せずに、ドライバーを手にして、快く台の様子を見に来てくれた。慣れた手つきでコンパネのフタを開ける。うわちゃ―――、これは素人の私が見てもすぐに分かる、レバーを支えている板が、半分外れてブラブラいってた。こんなんで私は良くゲームやってたね。おじちゃんはきりきりとネジを締め直すと、今度は足元を開けて、サービススイッチ入れてから、笑顔で私に「どうぞ」と椅子を勧めてくれた。
 ありがとうございます――温かい思いを胸にして、おじちゃんのくれた1クレジットと私が用意していた1コイン、つまり2コインで、気合で戦車地帯を突破、初めてダイナモに到達する事ができた。……話を交わす事がなくても、一緒にゲームをしている仲間がいて、見守ってくれる店の人がいて、人のぬくもりに満ちた場所、だから私はゲーセンが好き。ずっとこうして、ここに通えたらいいな……ずっと……。

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