1995年1月5日
〈終章――丸ノ内線02系第31編成〉
年は明けた。1994年の夏は、有無を言わさずに終わってしまった。今日は仕事始めだ。帰りにゲーセンに寄れないのは悲しいけれど、仕方のない事だから。
心残りに思っていた事が1つある。……02系第31編成に会いたかった。茗荷谷で初めてレイフォースに逢った夜、私を迎えに来てくれた編成には、並ならぬ思い入れがあったのだが、02系は50連弱存在する(注・当時。今は50連を超えている)とはいえ、エンカウント率は低い方で、第31編成に会ったのは、2コインで G.P.M.S.-2 まで行けるようになった頃に、一度きりだ。
今度第31編成に会えたら、どんな事を話そうか。――思い続けて果たせなかった。
会社からの帰り道、私を呼ぶ声が聞こえたら辛いばかりだから、センサーを切って茗荷谷駅の改札を抜けた。階段を下りてホームに出る。反対側のホームに02系が止まっている。こんばんは、お前は何番? ――次の瞬間、私の網膜に突き刺さった車番は、「02631」。
第31編成じゃないか――――!!
驚きのあまり身体はその場に立ち尽くしたまま、言葉ばかりが頭の中をぐるぐると駆け回った。――何で、何でお前がここにいるんだ。よりによって、私がゲーセンに通えなくなったその当日に。ずっとお前に会いたいと、思い続けてきたけれど、遅かったよ。今お前に話せる事なんて、もう何一つないんだ……!!
……最高の終わり方をしたから、悔いはないと言った。だけど…っ、志半ばでゲーセンを去らなければならない事が、悔しくない訳が、悲しくない訳が、ないだろぉっ!!
涙でにじんだ「02531」の文字が、ゲーセンの方角へと走り去っていった。
ああ―――私はあの時から、ずうっと第31編成に乗ったまま、レイフォースという長い長い夢を見ていて―――今、同じ現実の茗荷谷駅のホームに、降り立ってしまったのかもしれない。
……レイフォースをやりにゲーセンに通い詰めた私の日記は、これでひとまず終わる。
それからひと月も経たないうちに、茗荷谷からレイフォースは姿を消した。だから、どっちみち時間切れだったという説もある。私がレイフォースをやれるのは、もう2週間に一度の代々木だけ――可哀相に、って思う? 心配しないで、そんな状況には耐えられなくて、基板、買っちゃったから。以前ガイアポリスのノベライズをやった時、モニターとコントロールボックスを、揃えていたのが幸いした。同じ縦画面だから、ハーネス差し替えるだけでOKだった。……だったらそんなに騒ぐなよ、って、怒られても仕方ない。でも、できるならゲーセンでやる事にこだわりたかった、それだけは、分かってくれるよね……?
基板とハイテク代々木でやり込んで、この日記をまとめている95年11月現在では、実力的には1コインで7面に行けるかどうか、という所まで漕ぎ着けた。連付きでは11月8日に、御茶ノ水で1コインクリアをマークしている(この時の事は別の機会に別の場所で)が、これは陸上で言う追い風参考記録のようなもので、本当のクリア=連なしでのクリアには、まだ当分時間がかかりそうだ。
1コインクリアはもちろんとして、あまりに高過ぎる目標だけれど、気力が続くなら、ノーミスクリアを目指したい。それこそが真実の「彼女」、「本来『彼女』に、残機もコンティニューもありはしない」のだから。――たとえ九分九厘、その先を切り拓く力が、自分にはないとわかっていても、残り一厘に、私は賭けてみたいと思う……!!
時の果てのその果てで――――
私がレイフォースをノーミスクリアできる日まで、この日記は完結しない。
……そして未完のまま終わるような気がする(苦笑)。