……いやぁ、160ページにもわたってお付き合い下さいまして、皆様どうもありがとうございました。ここで一区切り付きましたんで、まずはここまでの解説及び後書きと参りましょう。──と言っても、日記とトークが解説無しで通じないんじゃしょーもないので、いきなりパス!(爆笑)。小説の解説から行きます。
──キーになる本質的な言葉を1つ見付けて、それを軸に物語を展開する、というのが私の基本的なやり方なのですが、レイフォースの場合、考えられ得る世界の幅が広過ぎて、言葉を1つに絞れず、また、1つの世界だけをノベライズと言い切ってしまえる度胸もありませんでした。そこでHYPOTHESYS -仮説-と銘打った訳です。
最初は仮説1【ARTIFICIAL】-造り物-。アンドロイド説に則った展開をしてみました。もっとも、〈のぞみ〉の話だけをすると、それはCDのライナーと何等変わらなくなってしまうので(笑)、2P側パイロット〈あさかぜ〉を定義しました。この本全体の中では、前座的位置付けです。
次がサイボーグ説を取った仮説2【CLOSENESS】──機械と人間との、-近接-です。目指したのは、「読み終わるまでにきっちり30分かかる小説」(笑)。アドバイザーから、「小説が書きたいんだか、攻略が書きたいんだか分からん」という苦言も頂戴しましたが、徹底してゲームをやり込んだ人間でなければ出来ないノベライズ、というのを、一度やってみたかったんです。
……私が再三投稿ネタにしてきたことですが、「レイフォースは悲劇ではない」というのが私の持論です。投稿や同人誌で見掛けるノベライズのラストは、大抵悲しみや寂寥感に彩られたもので、これを読んで、目が点になってしまった方も、少なくないかも知れませんが──そのBGMが「彼女」の想いであるのなら、エンディングで得られる感情は「至福」であるはず、というのが、1コインクリアを果たしたプレイヤーとしての、偽らざる実感であったのです。……何故、「彼女」の「声」を聴こうとしないのですか? 何故、同化出来ないのですか……? 自分の喜びに素直になるだけでいいのに。──それでもどうしてもこれじゃあ納得出来ない、と思われた方には、CDを引っ張り出して、「Q.E.P.D.」を聴き直して頂きたいな、と思います。
そして、全ての世界の基礎となる仮説3【CIRCUMSTANCES】-事情-。
……私がこの本を作る上で、一番書きたかったキャラクターが、実は〈つばさ〉でした。「自殺」するまで追い詰められた彼の苦しみは、きっと「自我の崩壊」という5文字ぽっちで、表現し切れるものじゃない──。自我崩壊の危機に瀕した人間が、実際にどのような目に遭うか、ということを念頭に置いて書きました。それと、人物相関図なんて物を書いてみると良く分かる(書くな……)のですが、〈つばさ〉の存在していた世界と、F04の存在している世界とは、ものの見事に断絶してしまっています。〈つばさ〉を書くために、ビデオ版の歴史とは合わなくても、〈ひかり〉と〈こだま〉の存在を、想定せざるを得なかったのです。(余談:ゲーメストNo.196をご覧になった方へ→「受け継がれる光」は、仮説1以前に既に書かれていた、「仮説0」とも呼べる存在で、「青年」は〈つばさ〉と同一キャラクター。「少女」こと〈こまくさ〉がいたかいないかで分岐するパラレルワールドです。)
で、〈つばさ〉の次に書きたかったキャラクターが〈はるか〉です。(「それじゃ私の立場は何処ぉー!?」←〈ひかり〉の泣き真似)どんなSF戦闘物の世界にも、必ず彼女のような裏方がいる訳で、普通出てくる女性っつーと、パイロット仲間とかナビゲーターとか、せいぜい科学者止まりとゆー現状の土手っ腹に、風穴をあけてやりたかったんです←たかが同人誌で大袈裟な(汗)。
……異色の仮説4【FUSION】-融合-は、私が一番最初に考えていたレイフォース──が、原型をとどめないまでに変形してしまったものです。(余談:ゲーメストアイランド血風録をご覧になった方へ→「夢見た星へ」──あ……あーれーはーっっ、ゲームをやりもしない内から書いていた(爆)、この話のプロトタイプの、さらに習作だったんですよぅ(滅)。設定滅茶苦茶で、今となっては穴があったら埋めたい位恥ずかしーです……)一番プレイヤーに近いレイフォース、 というのを考えたらああなりました。あのゲームをプレイするのは、戦うための力を持ちながら、戦場に足を踏み出せない「彼女」に、勇気を与える営みでもあるんじゃないか、って思います── “PENETRATION” は、「彼女」の想いが私達を支配するキーワードであると同時に、私達が「彼女」の行動を支配するキーワードでもあるのです。人にいうこときかせるのに催眠術っつーのは、相当アンチョッキーだけど、他に思い付かなかった……。「彼女」に何をして返せるか──ベストを尽くしてあげること、それしかないような気がするんです、月並みですけど──…。プレイスタートとエンディング突入の瞬間が、ゲームに重なっていてくれれば成功。「だから稼ぎに走って死んだりなんかしちゃいけない」ってゆーことが、分かってもらえたら大成功だ(笑)。
「ド素人に捧げるゼロからの攻略」ですが、小説より何より、これが一等キツかったです(疲)。パターン全部知ってるはずなのに、いざ書こうとするとウロ覚え炸裂、ゲーム雑誌の攻略ライターさんの苦労を、身を以て思い知りましたワ。「これが『レイヤーセクション』だったらあぁ!!」と何度絶叫したことか──(業務用基板にポーズなんてゆー親切な物などあろうはずが無かった)。でも、「超稼ぎ攻略を書ける人なら沢山いるだろうけど、純粋に素人向けの攻略を書けるのは、全くのゼロからレイフォースを始めた私しかいない……!」という一念で、頑張りました! ──この攻略をお読みになって、「レイフォースの世界観は好きだけど、ゲームは難しいからロクにやらなかったor投げちゃった」という方が、1人でも1コインクリアを目指して下さったなら、それだけで私の努力は報われよーというものです。そして、「あの」感動を味わえて頂けたなら、何も思い残すことなどありません、ハイ。
──さて、ここからが後書きです。……1995年10月から2年半にわたったこの本の制作については、「苦しかった」という以外に言葉がありません。どだい、母が不治の病に倒れ、家事のかなりの部分を代行せざるを得なくなった時点で、どう考えても諦めておくべきでした。この本を作るために、他の全ては犠牲になりました──アニメ見て投稿するのをやめた(鉄いペンネームで雑誌を荒し回ったのも今は昔)し、あっちこっちにアクセスしてたパソコン通信も、大部分切り捨てた。ゲーセンなんか通ってたら、原稿書く時間なんて残りゃーしないから、「レイストーム」も「電車でGO! 1・2」も手を出せなかったよ!!(私、メインは鉄道趣味なのに──っっ(号泣))。平日はもちろん会社で仕事、休日は、家事で寸断された時間をかき集めて、休むことも遊ぶことも許されずに原稿を書く。こんな生活あんたやりたいか? ちなみにあたしはまだやってる。ビデオでなあ、あんなオチさえ付かなきゃあ、わざわざウチらがだなあ(以下128行検閲により削除)←何のことだか早く知りたい人は、次号予告へどーぞ。──全く思うように進まない制作に、流した涙は、冗談抜きで何リットルだ……? 書きかけのフロッピーディスクぶち割って、最初から何も無かったことにしてしまおうとしたことも、4回や5回じゃなかった。こんなに辛い目に遭うのなら、いっそ好きにならなければ良かったと、出会いそのものを呪ったことすらも──。でも、こんなことは読者様には何の関係もないことですし、「苦労した分いい物が出来ているはずだ」ぬぁんてフザケた台詞は、本星が壊れても吐きませんので、4秒過ぎたら忘れちゃって下さい。
これ程の困難を乗り越えて、ようやくここまでたどり着けた理由が2つあります。1つは、周囲の人々の協力があったからです。まず、この同人誌制作に携わったスタッフ3名の働きに心から感謝します。それと、お励ましを下さったネットの方々、FSGの方々、それにゲーメストアイランド担当者様、皆様のお言葉を力に変えて、ようやくこうして本をお届けすることが出来ます。お待たせしてしまって本当に申し訳ありませんでした。そして、ありがとう。
最後に、自分の家族を忘れる訳にはいきません。母さん、本来なら家事に専念すべきところを、我が儘を通してしまって、ごめんなさい。父さん、洗濯とか炊事とか買い物とか手伝ってくれて、ありがとう。それから弟よ、お前は、私とレイフォースとを引き合わせてしまったことを、後悔してるらしいけれど、私はお前には、本当に感謝しているからね。
そして、もう1つの理由──…、それは、レイフォースというゲームに、私を4年間もやり続けさせる、また書き続けさせる程の魅力があったからに、他なりません。何百回プレイしても全然飽きなくて、いくら探究しても足りない奥の深さがあって、何から何まで、隅から隅まで私好みに出来ていて、私にとってこれ以上のゲームなんて、物理的に絶対存在出来ません……! このゲームを創って下さった開発スタッフの皆様には、どれだけ深謝したらいいか──ABEさん、NAKさん、MISさん、KATさん、HIKさん、これ以上は残念ながら、お名前割愛させて頂きますが、この本は、これ程のゲームを創られるために、どれ程費やして下さったであろう、皆様のご苦労に対して、コインを入れるだけでは感謝を表現し切れない、と思ったプレイヤーからの、精一杯のオマージュです。あまりに遅くなってしまいましたが、言うなれば「想いの花束」を、どうか受け取って下さい。
それから、ゲームミュージックのCDという枠を粉砕したCDを世に送り出して下さった、ZUNTATAの皆様にも花束を……。あれはもう完全に出来が突き抜けていて、私が思うには、V.C.O.シリーズの「ゼルダの伝説」みたいな物かなと←プラットフォームが新しくなると、クリエイターがいい意味で暴走して、「最初にして最高傑作」が生まれるということ(©SHIN落合様。形容が古過ぎて分かんない人がいるとマズいので一応)。CD1枚で人生変わりましたマジで(笑)。──TAMAYOさん、私は逆に音符を言葉に直すのが好きなのですが、さて正しく「訳せて」いますでしょうか?(どきどき)。Yack.さん、自分のイメージを必要以上にふくらませて、勝手にマルチ・クリエイトさせて頂きました(笑)(これからもするんですが)。「クリアする度に感じる達成感」というのは、本当だったんですね。ばびーさん、「様々な人々の意志」や「時代の流れ」を表現するために、作ったキャラクターが〈はるか〉です。“FUSION” というキーワードがダブった時はのたうち回りました!(ビデオが出る前から仮説4はあったんです。信じて(汗))。
……映像と音楽と、設定とストーリーと、ゲーム性と演出と──およそ総ての要素が、奇跡的な調和を成した、綺羅星のようなゲーム:レイフォース。時期的にも年齢的にも、私がたった1つやり込むことを許されたゲームが、これ以上ない程の名作であったという、類稀な幸運に感謝しつつ、この本を、このゲーム世界の構築に関わられた、全ての方々に捧げます。
──この本を作る道程は、例えて言うなら、……真っ暗な闇のなかに、1本ぽつんと、長い長い螺旋階段があって、その上を、消えそうな星のように輝いている、はるか天上にある出口目指して、とぼとぼと歩いていくようなものでした。息を切らしながら、涙を流しながら、いくら歩いても、一向に近付いたようには思えない出口を見ながら、常に私の脳裏には、1つの大きな危惧がありました──(作るためにこれ程までの困難を伴ったこの本を、愛することなど出来るのだろうか?)という。けれども、今、ようやく出口に顔だけ出して、ちょうど春の暖かな日差しに照らされて──具体的には、MINOYAさんをして「こいつヤバいよ!!」(←「スゴいよ」じゃないところがミソ(笑))と言わしめた、厚さ4cmの版下(!)を目の前にして、胸を満たす想いは、“MISSION COMPLATE”:自分のなすべきことを、ようやく総てなし終えた、静かな、静かな満足感、ただ、それだけです。
先程、レイフォースというゲームに関して「およそ総ての要素が、奇跡的な調和を成した」という表現を使いましたが、私とレイフォースとの関係について、殊に、本を制作する条件においても、同じことが言えます。……私が女として生まれてきたこと(言わずもがな)、総務の実務経験があったこと(ハルカの章はかなりの部分が、某社総務の内幕暴露)、たまたま 1994年に、スペイン語学科に進んだ従妹がいたこと(ますちゃんアリガトウ!)、かつてガンダムファンであったこと(同質の発想がソフト方面に進むと強化人間になり、ハード方面に進むとC.L.S.になる)、今も鉄道ファンであること(発想の「鉄」度は、これからさらに過激になる!(汗))、その他、人には言えないヤバいファクターもあったりして───「私が生まれてきた総ては、レイフォースを書くためだった」、という気がしてなりません。
……それにしても、レイフォースというゲームが世に出てから、もう本当に4年もの時間が経つんですね。てめーの遅筆さを呪い続けた私の周りで、何もかもが姿を変えてゆきました──前述の従妹は、大学生活を終えて今年就職し──仮説2を書いていた頃(1996年春) ほんの走りだったアロマテラピーは、本当に大ブレイクしちゃいましたね──紺色だった会社の制服は、100周年記念とやらで茶色になり──度重なるダイヤ改正で、「あおば」の列車愛称が消滅(〈とき〉のコードネームを持つキャラクターもおるのにぃ(泣))──それとどーゆー訳か、〈あおば〉のモデルと〈はるか〉のモデルが結婚したりして(〈はるか〉には別のお相手がいるのだが←ヒント:一言だけ喋ってます)──、店内改装さえ乗り越えて、生き延びたかに見えたハイテク代々木の台も、1997年7月でついに力尽きた、というのは、ゲーメストNo.207に掲載された通りです。
けれど、たった1つ変わっていないこと、それは、「私は今もレイフォースを愛し続けている」ということ───。
“何でもこなせる” という人より、“これしかできない” “だから俺にはこれしかない” という人物に強く惹かれます。/“これしかない” からこそ、くるおしいまでにその道を突き進み、いつの日か “これだけは他の誰にも負けない” という高みを極める。[曽田正人先生「め組の大吾」3巻]
──私には、レイフォースしかありません(そりゃ家族だって会社だって鉄道趣味だってありますが、ゲームとしては)。それ以前はゲームそのものにさして関心がなく、それ以降はゲーセンに通える環境に恵まれず、仕事のやり過ぎで腕を痛めてしまった今となっては、他のゲームをやり込むことすら叶いません。でも、だからこそ、普通のゲーマーが別のゲームたちに分散させてしまう情念を、ただ1つのゲームに集中して、同人作家としてとことんレイフォースを突き詰めることが、自分になら出来るはずだ、と思えるのです。
……CDを聴き、ハイテク代々木で出逢い、半年とはいえ茗荷谷のゲーセンに通うことが出来、ネットを通じて多くの人々と知り合い、今もプレイできる環境があり、こうして何とか本を作ることが叶い、そして、ここまで本を読んで下さっている方々が、近い将来現れてくれるであろう──それら、私と関わっている、レイフォースに関する総ての事象に、最後に伝えたい言葉、それは────
「ありがとう……貴方に、逢えて、本当に、良かった。」