――「レイフォース」は、実は、悲劇ではない。
 
「味方の艦隊は途中で全滅、パイロットも最後には敵本星の爆発に巻き込まれて死ぬ話が、悲劇以外の何だっていうんだ!!」と、反論したくなった人が大勢いるかもしれない。……このことを理解するためには、パイロットの女性――名前がないので「彼女」と呼ぶ――と、「同化」する必要があるのである。
 
 自機が、機体と一体化している「彼女」でもあると仮定して、“PENETRATION!” のキーワード通りその中に入り込み、視界を見てみよう。世界が自機の前後左右のみならず、上下にまで拡がっていることに驚かされるはずだ。2D のゲームでありながら、そこには各面のサブタイトルで示される、面クリア時でさえも途切れることのない、広大で完全な立体が存在している。対空対地撃ち分けのない STG が決して持ち得ない、深い奥行きの中を、ロックオンレーザーは美麗に貫いてゆくのだ。
 
 それが出来たら、今度は BGM に耳を傾けてみよう。STG の BGM というと、アップテンポの戦闘的なものが大部分であるが、このゲームの曲は、「彼女」の心理描写なのだ。……聴こえるだろう? 時に高揚し、時に迷い、あるいは彼方を恋うる「彼女」の想いが! 特に、最終面の凄まじい攻撃の中で聞こえてくる曲は、プレイヤーに透徹した戦いの境地を、十二分に味わわせてくれる。
 
 ラスボスを倒すと――自機はプレイヤーの制御を離れ、ラストシューティングへと向かう。……そう、それは今まで総てを私たちに預けてきた「彼女」の、最後の決着だけは自分の手で付けたいという、強い意志の現れなのだ。
 
 そして、エンディング――先入観などに惑わされずに、全身で曲の旋律を受け止めてほしい。「自分の選択の結果を悲しみはしない、後悔もしていない!」という「彼女」の想いが、間違いなくそこにあるはずだから……!! 自分に素直になって、そこまで戦い抜けた爽快感を、「彼女」と共有できた時、レイフォースは悲劇でない顔を、君達に見せるだろう。そうして「彼女」は、安らかな眠りに就いたのだ。
 
 ――このゲーム、「レイヤーセクション」という名前で、サターンに完全移植されてはいる。でも、ひっそりとでもいいから、どこかのゲーセンに置いておいてもらえないだろうか、と私は願っている。今ゲーセンにあったとしても、全く遜色のないグラフィックであるし、その魅力と世界の大きさは、小さな家庭用テレビの画面に、押し込めておくにはもったいないから。
 

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