拝啓 ハイテクランド代々木のレイフォース様
 
 7月9日から、18日までの間のどこかで、ついに姿を消してしまった貴女へ……
 8日に何気なくプレイしたのが、最後になってしまうとは、思ってもいませんでした。
 数々のビッグタイトルの攻勢を凌ぎ、続編・レイストームの登場さえはねのけて、これまで生き延びてきた強い貴女が、まさか、新しいという以外に何の魅力も持たないようなゲームなんかに、取って代わられてしまったなんて、悔しくて、今も認めたくありません。
 
 貴女に初めて逢ったのは、94年5月6日のこと。弟がプレイして見せてくれた、貴女の姿、見ている風景、BGM、凄く綺麗でした。――それで思ったんです、自分なんかにゲームは出来ないって決め付けてた、全くゲーム経験のなかった私が、自らの手でプレイしてみたい、貴女に近付いてみたいって。
 
 最初は他の店でプレイしてましたけど、半年くらいで次々と姿を消してしまって、貴女だけが生き残ってくれました。
 
(ここにある内に1コインクリアできなかったら、絶対後悔する!)、そう思って必死で取り組んできた私が、そこにたどり着くまでには、23ヵ月もの時間を要しました。――その時、私、ただただ達成感と幸せしか感じませんでした。結末が貴女の死だと知っていたにもかかわらず。……最後まで敵の攻撃という試練に耐え抜いた者だけが、貴女と本当に一つになる資格を得る、貴女の功績を讃えるエンディング曲の旋律(しらべ)を、自分自身に向けられたものとして聴くことが出来る、だから幸せになれたんだ――今考えるとそう思えます。
 
 そういえば、私がなぜ貴女と縁があったのかを、まだ話していませんでしたね。……それは私が近くの病院に通っていたから。最初出会ったのも、「6日病院行くよ」「じゃあハイテクだ」っていう理由からでした。
 
 通院の楽しみは貴女との逢瀬だけ――いくら飲んでも病気を治してくれない薬は、けれども全く同時に、私と貴女とを結んでいる最後の絆でした。検査の結果が悪くてどんなに落ち込んだ時でも、ヘッドホンから流れるステレオサウンドと、基板オートの倍くらい速い連射は、いつでも力強く私を励ましてくれました。貴女は正に私の心の支え、無二の友といっても過言じゃなかったんです!
 
 たくさんのゲーム友達、懸賞論文やアイランドへの掲載、何十回ものプレイ――とりわけ印象に残っているのは、開発者を含むネットの仲間が見守ってくれた中で、1コインクリア出来たこと!――数え切れない程のいい思い出を残してくれた貴女。ノーミスクリア目指して、これからもずっと付き合っていくつもりでした。それなのに――貴女はあまりにも唐突に、もう手の届かない闇の彼方へと、本当に旅立ってしまった……!!
 
 悲しくて寂しくて辛くて、まる1日声もたてずに泣きました。3日間何も手に付きませんでした。……1週間かけて気持ちを整理して、ようやくこの手紙を書いています。
 
 実は今、私、貴女の同人誌を作っています。書きたい想いがあり過ぎて、草稿段階で140ページという、気違い沙汰になってしまいました。あまりに遅過ぎましたけど――否、遅くなってしまったからこそ、完成させなければいけないのだと思います。いずれ姿を消す宿命のアーケードゲームであった、貴女という素晴らしいゲームの存在を、不滅の形で残すために。「ゲームは古びることや、ゲーセンから消えることでは死なない、プレイヤーが愛し、語り続ける限り生きる」と力付けてくれた、友人たちに応えるためにも。
 
 ……会社の仕事に加えて家事をも背負い、僅かな自由時間の全てを費やして、休むことも遊ぶことも許されずに原稿を書く日々は、正直言って地獄です。でもこの別れが、「私は本来の寿命を遥かに超えて、今まで側にいてあげたのだから、この先は自分一人だけの力で、成し遂げてみせなさい」という、貴女が私に与えた最後の試練なのだと思って、頑張ります。耐え抜いた後に、1コインクリアの時のような、至福の達成感が待っていることを信じて――…
 
 だから、どうか、宇宙のどこかから、私を見守っていて下さい。
 
 腕を壊してもうゲームの出来ない私が、心の底から愛せた、最初で最後のゲームとなった貴女へ――38ヵ月もの長い間、今まで本当にありがとう。そして、さようなら(Farewell)
 
 ようやく任務から解放された貴女に、永遠の安らぎがあらんことを……

敬具 
 
1997年7月27日 
新宮 -MNT- 智子 拝 
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