「レイフォース」などという、レゲーもいいところのシューティングの専業プレイヤーである私に、もはや雑誌上での出幕などあるまいと、投稿を諦めていたのだけれど、アルカディアVol.1・P158~9で、新宿の「アミューズメントフォーラムモア」が、取り上げられているのを見た次の瞬間、矢も楯もたまらなくなって筆を執――もとい、ワープロを立ち上げてしまっていた。

 時を遡って、1994年5月……弟と待ち合わせて行った、代々木駅近くのゲーセンで、間違っても狭いとは言わない店内において、ただ1台だけヘッドホンを装備し、その圧倒的な優位性を誇示していたかのようなエアロシティ、それが、私が最初に見た「レイフォース」だった。――左利きの私が、右利き用に出来ているコンパネを、生まれて初めて扱った時に感じた、身体がバラバラになるかと思えた程の、確実にイマワノキワノソーマトーに登場するであろう、激烈な違和感を、今もなお、昨日のことの如く鮮明に思い出せる。

 超連射付き+ステレオサウンドという、これ以上無い程の豪華版だったその筐体は、私が知る限りでは、3年2ヵ月もの記録的な長寿を遂げた。最高のプレイ環境を味わわせてあげたくて、一体何人の友人を、その店へ連れて行ったことだろう。――しかし、店内の全面改装からわずかして、その場所は凡百のニューゲームに、あっさりと取って代わられてしまっていた。「今まであれだけ大切にしてくれてきたのは、一体何だったのだ」と、なじりたくなるような終わり方であった。

 ……まあ、仕方ないよね、どんなゲームだって、時間の流れには勝てないんだから、と甘受するより他になく、それ以降は、アキバのトライタワーへ時々足を運んで、昔を懐かしむ感じのプレイ形態になってしまった。

 ところが、それから1年くらい経った頃だったろうか、「連付き+ヘッドホン装備のレイフォースが、新宿で稼働している」という話を、風の噂に聞いたのは。――その台がある店こそが、先に言及した、「アミューズメントフォーラムモア」だったのである。

 彼氏に案内してもらって、私が対峙したそのイーグレットは、紛れもなくあのエアロシティの生まれ変わりだった……!! 当時と比べて全く遜色の無い連射の威力、それに、音譜のどんなに小さな1粒までも聴き逃させない、この音と比べれば、JAMMAコネクターのモノラルサウンドなど、耳栓をして曲を聞き流しているようなものだ――!!

 それからというもの、家事も仕事も残業も夜の付き合いもあるので、せいぜい月に一度くらいではあるけれど、私はその店に通い続けている。1プレイ50円のゲームをやるためだけに、650円もの電車賃と、夕食代を費やしてまで……それでも全然構わない、物凄い連射も、本物の音も、そこにしか無いものだから。

 ――いや。
 もし仮に、自宅に全く同じ状態の筐体があったとしても、私はゲーセンに通うことの方を選択するだろう。

 その場所が、「ゲームをプレイする」という、たった一つの目的のためだけに存在しているが故に、極めて純粋にプレイに集中出来ることの、何物にも代え難い喜び。
 自分が働いて得たお金を、その度ごとに筐体に投入する=自分の一部を分け与えることで、生命を吹き込むというような行為。

 見守ってくれる店の人がいて、他のゲームをしている仲間がいて、ランキングを見れば、今日もその台を愛してくれた人の痕跡がそこにあり、ゲーム雑誌のハイスコアページには、私なんかより遙かに高い次元で、現在も戦い続けている方々がいる――ゲームをプレイするのは一人であっても、決して孤独ではない、人の体温に満ちた営み。

 これら総てをひっくるめて、「ゲーセンでゲームをプレイすること」、それ自体を、私が愛して止まないからなのである。

 自分で基板を所有している(!)し、サターンに完全移植されてもいる(余談ではあるが、ゲーセンで稼働中の台が幾つかは残っているにも関わらず、移植先ハードであるサターンの寿命の方が先に尽きてしまったのには、運命の皮肉と言うより他は無い)けれど、私には、「本当のレイフォース」は、ゲーセンという空間の中にしか、存在し得ないような気がする。――そう、私にとってはその場所こそが、まさしくARCADEの理想郷=ARCADIAなのだ。

 ……でも、一つだけ文句言わせてもらっていいですか? 「安過ぎる(笑)。」この先もずっと置いておいてくれるのならば、1回に500円、否、5000円出したって、少しも惜しくなんかないのに――! あんまり申し訳なくて、レイフォースやった後、せめてもの罪滅ぼしのつもりで、地下の占いマシンにコイン突っ込んでます……同じタイトーさんの、「13星座占星術 セーマトレイス」。

 平均寿命が1年とも半年とも言われるアーケードで、一つのゲームを、5年以上もプレイし続けられているのは、宝くじに大当たりするような、類稀な幸運だって分かってる。それでももっと、もっとMOREもっと

 画面上を故意に敵機で埋め尽くし、弾の嵐をかいくぐってフルロック――ということが可能なハイスペックを、残念ながら持ち合わせていない私にとって、目指すは一つ、「ノーミスクリア」。死んでランクが落ちることの無い、主人公が体験した真実の攻撃を、何が何でも切り抜けてみたいのだ。

 ……今までずっと貫き通してきた、そしてこれからも絶対に続いてゆく、私のレイフォースに対しての、尽きること無き情熱を、端的に表現している、約5年前に書いたフレーズを、もう一度、ここに書こう。

「『左利きのレイフォーサー』の挑戦は、ゲーセンにレイフォースがある限り続くはずだ。」